2023.08.28
さいたま梨花カントリークラブが、2023年8月10日から名義書換を停止しました。理由についてコースから正式な発表がなされている訳ではありませんので推測となりますが、昨年3月に開始した会員募集に入会手段を一元化するためと思われます。
基本的な事ではございますが、会員制のゴルフ場へメンバーとして入会する場合、次の2つの方法があります。
(1)コースが実施している新規会員募集で入会する
(2)市場からゴルフ会員権を購入し、名義書換を通じて入会する
(1)については、メンバー数が少ないなどの理由から、コースが設定した募集価格で新規入会者を募る方法です。通常は入会希望者がコースへ直接申し込みを行って入会します。
(2)については、ゴルフ会員権業者からゴルフ会員権を市場価格で購入し、譲渡人からの名義書換を通じて入会する方法です。通常はゴルフ会員権業者が仲介を行います。
ゴルフ場が新規会員募集を行う場合、一般的には名義書換を一旦停止し、入会窓口を募集だけに絞って行うケースが多いです。
なぜなら、(1)新規会員募集と(2)名義書換を同時に行った場合、(2)の名義書換を通じてご入会された方が、総額では安くなるためです。
本件をもう少し詳しく補足したいと思います。架空のAゴルフ場を例に、会員募集と名義書換を同時に行った場合の例を解説したいと思います。Aゴルフ場の新規募集価格と名義書換料を仮に以下とします。
(1)Aゴルフ場の会員募集価格>66万円(税込)
(2)Aゴルフ場の名義書換料>44万円(税込)
Aゴルフの入会を検討しているBさんは、募集か名義書換かどちらの方法で入会すべきか悩まれています。コースが行っている会員募集で入会すれば総額66万円を支払えばメンバーになれます。一方、名義書換の場合、会員権代金や業者への取引手数料が総額22万円以下で納まるようでしたら、名義書換の方が安く入会することができます。
募集額66万円-名義書換料44万円=22万円
ここでAゴルフ場のメンバーで会員権売却を検討されているCさんを例に、売却者の視点で考えてみたいと思います。
Aゴルフ場の募集価格が66万円で、名義書換料が44万円の為、ゴルフ会員権価格は22万円以下でないと市場で売却ができません(業者の取引手数料は加味しておりません)。なぜなら、ゴルフ会員権代金が23万円になった時点で、会員募集価格の66万円を上回ることになるので、入会希望者が市場から会員権を購入されなくなるためです。
そのため、コースで会員募集が行われている場合、売却時のゴルフ会員権相場は必然的に22万円以下に限定されてしまいます。さらに会員権業者の手数料も加味されますので、実際は会員権価格としては20万円以下でないと売れないことになります。
売り手様もCさんお一人ではありませんので、上限価格22万円を頭に売りの件数が増えてくると、どんどん相場は下がってくることになります。入会希望者(買い手)もそのあたりはわかっていますので、後はどれくらいの価格で成約するか=募集金額からいくら安ければ買っていいか、というところになってきます。
従って、コースが(1)新規会員募集と(2)名義書換を同時に行っている場合、どうしても名義書換で入会された方が安く入会できることになってしまいます。また、あまり長い期間募集を続けていると既存メンバーからの不満も大きくなってくるため、ゴルフ場にとっては、募集タイミングと募集額は非常に神経を使うことになります。
ただ、最近ではPGMをはじめ、上記(1)と(2)を同時に行うゴルフ場も増えてきました。PGMの場合、(1)と(2)を考慮し、ぎりぎりの金額で会員募集価格を設定されるケースが多く見られます。言わば、募集と名義書換のどちらで入られてもさほど変わらないような募集価格の設定です。
なぜ、名義書換を停止せずに募集を行っているのか?
これも推測になってしまいますが、一つには名義書換を停止することによるメンバー様の不満を解消するためかと思われます。また、PGMのゴルフ場の場合、PGMコースに在籍3年以上された方は名義書換料が半額になるP-CAP制度があります。本制度を利用できれば、名義書換料が半額になりますので、募集額よりもかなり安くご入会することが可能となります。
ゴルフ人口が減少している中、既存メンバー様の不満も解消しつつ、どのようにメンバー数を確保していくか、各社のスタイルも様々となっています。
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