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2022.07.11

アコーディア・ゴルフの今後の戦略

先週から今週にかけて、アコーディア・ゴルフ及びネクスト・ゴルフ・マネジメントの多くのコースで、名義書換料の値上げ改定、及び補充会員募集の終了が発表されました。多くのコースがそれ程高い相場になっていない中での名義書換料の値上げとなるため、今後、同グループの会員権に対する需要が更に減少するものと思われます。

【関連ニュース】
アコーディア・ゴルフの主なコースにおける名義書換料の改定(2022年9月1日~)
東千葉カントリークラブ(千葉県)名義書換料の改定

既に先行して、2019年12月と2021年11月に「アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ」の名義書換料が二段階で値上げ改定されており、今年の6月には「大厚木カントリークラブ」(正会員)の名義書換料も値上げ改定されています。

大厚木カントリークラブ(正会員)を例に取ると、名義書換料の変遷は以下の通りです。

・【従来の名義書換料】660,000円(税込)
・【2022年1月から】トランスファー制度(名義書換料50%引)とシルバーステイタス(名義書換料30%引)の適用が除外。
・【2022年7月1日からの名義書換料】880,000円(税込)に値上げ

大厚木カントリークラブは大型の一般大衆コースでもあり、近隣コース(正会員)と比べても名義書換料の高さが目につきます。

東名厚木カントリー倶楽部→220,000円(税込)
東京カントリー倶楽部→440,000円(税込)
チェックメイトカントリークラブ→660,000円(税込)

アコーディア・ゴルフの今後の戦略の概略

【「メンバー&ビジター混合型」から「パブリック化」への移行】
最近のアコーディア・ゴルフにおける一連の施策を見ていると、以前よりもさらに、会員を主体とした運営から、ビジターを主体とした運営に切り替えているように思えます。言うなれば、会員制コースからパブリックコース化をより推進しているようにも見て取れます。

会員制のゴルフ場にとって、会員からの収益(会員募集、名義書換料、年会費)は大きなものであり、完全なメンバーシップコースを除けば、会員からの収益とプレーフィが高いビジターからの収益をうまく調整しながら収益を上げています。ビジター比率を高めてしまうと、会員の満足度が低下しかねませんので、各コースのこの辺りの調整加減が腕の見せ所になってきます。

ただ、昨今のコロナ禍におけるゴルフブームもあり、最近はどのゴルフ場も週末は満杯になっています。こうした追い風を背景に、アコーディア・ゴルフでは、会員からの収益をあてにせず、プレーフィが高いビジターの割合を今まで以上にさらに高めていく方針に切り替えたものと思われます。名義書換料収入や年会費収入以上にビジターを入れた方が収益力は高まるという判断をしているのかもしれません。

【アコーディア・ゴルフの強力な集客力】
しかし、コースへの愛着を持って定期的に来場してくれるメンバーとは異なり、ビジターはメンバーに比べて計算のできない面も多分にあり、ビジターでその日の組数を埋めていくには、ゴルフ場に強力な集客力が求められます。アコーディア・ゴルフでは、グループ170コース以上を保有するグループの規模やこれまでに蓄積されたノウハウによって、確実にビジターを集客できるという自信があるものと思われます。

パブリック化推進の副作用としては、ビジターの比率が高まると、どうしてもスロープレーによる遅延や、来場客のマナーの問題等、コースの評判を下げてしまうリスクが生じます。十分な集客力がある前提で、ビジター比率を上げると、短期的な収益力は高まるかもしれませんが、長期的に見るとこのやり方が正解かどうかは現時点で判断が難しいところでしょう。

【ゴルフ場経営における新しいビジネスモデルか?それとも短期的な収益アップの手法か?】
アコーディア・ゴルフは昨年11月、投資ファンドのMBKパートナーズからソフトバンク系の投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループへ株式を譲渡しています。売却額は4,000円億円規模と言われています。今年に入ってからもMBK出身の望月智洋氏が社長を継続していましたが、2022年6月30日に新たに石井歓氏が社長に就任しました。

フォートレスも投資会社ですので、いずれは企業価値を高めた上で、数年後には株式譲渡を視野に入れているものと思われます。

アコーディア・ゴルフによる強力な集客力を背景にしたこのビジネスモデルについては、今後数十年かけてスタンダードなものとして定着していくのか、あるいは短期的な収益力アップのための手法となるのか、今後どうなるかについて非常に興味の湧くところです。

【2022年7月29日追記】ネクスト・ゴルフマネジメントの吸収合併について
7月下旬に、株式会社アコーディア・ゴルフでは、グループ運営の強化を目的とし、2022年10月1日付で、ネクスト・ゴルフ・マネジメントを吸収合併する旨のリリースを行っております。

リリースでは、全国のコースのオペレーションの統一による効率化を図ると記載されており、今後はアコーディア及びネクストG(合計で169コースと27の練習場)が一体となって新しいビジネスモデルを推進していくものと思われます。

【2022年8月追記】

8月8日のソフトバンクの決算会見で、孫正義社長は第一四半期の赤字計上によって、傘下のフォートレス・インベストメント・グループの売却方針を表明した。フォートレス・インベストメント・グループはアコーディア・ゴルフを保有しており、今後のゴルフ場運営に関しても注目が集まる。

【2024年5月追記】
セガサミーホールディングスは、宮崎県にあるトーナメントコース「フェニックス・シーガイア・リゾート」を含む大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」を運営する子会社を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する。ただ、売却後もセガサミーHDは新たに発行される株式の20%を保有し経営支援を行っていくとしている。フォートレスGは傘下にアコーディア・ゴルフを保有しており、今後「ダンロップフェニックストーナメント」開催コースの「フェニックス・シーガイア・リゾート」と、アコーディア・ゴルフをどのように棲み分けしていくかなど注目が集まる。

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